2003年のマイブック、12月5日のものをこっちにも書いてみたりしようか(修正版)

 飛べもしないのに羽があった
 あっても邪魔なだけだからもぎとった   ひきちぎった
 身軽になって   もっと遠くに行ける気がした
 痛くもなくて   その羽ははじめからムダなものだったんだって
 喜んで飛び跳ねた
 傷跡も残らず   血も流れなかった   きれいな背中
 しばらく歩いた   時には走った
 前よりも早くなったし   疲れて寝るときも楽だ   捨ててよかったなぁ、なんて
 周りには誰もいない   それでもよかった   ひとりの方がサクサク歩けるから
 

 結構遠くまで歩いてきた   いろいろ見てきたし   強くもなった
 でもまだ歩く  歩けるから   僕の体はきれいで自由だ
 

 とうとう端が見えてきた   思ったよりは短い旅だったかな
 途中で転んだりもしたけど   どんなに痛くても我慢したんだ
 旅の果てのこの日のために
 

 崖しかなかった   先はどれだけ見てもだだっ広い水たまり
 「落ちたら死ぬな、誰でもわかる」   そんなことをひとりつぶやいて
 前だけを見て進んできたのに…   迷いはなかった   これで正しいと思っていた
 前を見てももう何もない   僕ははじめて上を向いた
 きれいな空   空で羽ばたくたくさんの羽   いつか見た羽


 「自分で捨てたんだろう?」


 背中が痛い、赤い背中、血に染まった、倒れた。