簡単な平日、無残な休日〜第5 話

「あ、あの…」
細い男は話の内容よりもどもった声を出している時間の方が長い。
結局、その、疲れ切ったいわゆる日本のサラリーマンのような大学一年生は人の使いとして声をかけさせられたらしい。はじめて会った声の大きな、がさつな男に、なぜか連れてくるように言われ、断る術を持たない男はやむなくこちらに来たらしい。
…自分がやりたくてやったわけじゃない、それを証明するために緊張気味の男は、どもりながらもまくしたてるように話していた。

特に理由もない、ただ断る方が面倒臭いというだけで、食堂から講義の行われていない、昼間の日の光が当たらない教室まで着いていかされる羽目になった。
どもりながらまくしたてる、ある種器用なやつに相づちを打つのにも疲れた。
この時から薄々感付いてはいたが、あの時食堂で断っていた方が面倒臭いことにはならなかったみたいだ。
後悔している。なぜあの時、この男についてきてしまったのか。…その痩せた、というよりもやつれた男にはそれ以来会っていない。
ヤツにとっては、その時だけのパシリ、だったらしい。

薄暗い講義室の中、ぎらぎらした…服装も、顔の作りや色もそういった感じのヤツが、これまたキラキラと光ったケータイで、大きな声で話をしていた。

俺はどうすればいいかわからず立ち尽くしていた。
生まれて初めて「きょとんとする」ということをしたように思う。


…つづく