簡単な平日、無残な休日〜第2話
ここ最近、週に2度はおふくろの味、ってものを口にしている。
大学進学を機に、駅までも車で10分〜20分かかるような田舎町から、
日本の中でも有数の都市でありながらどこかパッとしないこの街の、
何も分からないまま入った不動産屋で言われるがまま借りたアパートで
ひとり暮らしを始めて2年近くなのだけれど、
この半年ほど、火曜と金曜の夜は母親が子の為に作る料理を食べることに
なっている。
金曜、ときどき地方局のニュースに出てはこの地方の経済はどうだ、
とか言っている教授が、いかにも退屈そうに話している講義―睡眠学習のため、
その時間そのメガネで一般的な教授の顔をした中年男性が何を話していたのかは
わからない―のあと、良い意味で簡略化されたカレーを食べていた。
どこの妖術師だかわからないようなスパイスから作られたものよりも、
市販のルゥを使って作られたカレーの方がうまい、というか、安心する。
「先生は、この週末は何かご予定がありますの?」
この、利点としてではなく作業の合理化によってできた具の大きいカレーを
作った女性が俺に聞いてきた。
そう、俺は「先生」と呼ばれる仕事をしているのだ。
「あぁ、はい。まぁ、ちょっと…」
なかなかに気まずい空間でテキトーに話を受け流そうとしていたところ…
「ただいまー」
お客さんがやってきた。
いや、実際には俺がお客さんのところに出向いているわけだが、
そこに自分よりも遅れて、俺が相手をすべきお客さんが、帰ってきた。
…つづく。