どうでもいい作品?

 壁は上下する。
 相手の顔が見えるぐらいの高さの壁や、
 またげば向こう側に行けるんじゃないかってぐらいの壁、
 どこがてっぺんかわからないぐらい高い壁もあれば、
 地面に埋もれてただのラインに見える壁もあり、
 実は、壁がないところだってある。


 いろいろな壁がある。
 分厚い壁も、薄い壁も、
 黒い壁も、透明の壁も、
 手だけ通る穴がある、そんな受け渡し口付きの壁なんかもある。
 もちろん、壁がないところだってある。


 見えないと思っていた向こう側との間にある壁が下がってきて、
 知らなかった向こう側が見えてくると、嬉しくなる。視界が、世界が、広がる。
 ないと思っていた壁。向こう側にいけると思って、透明の壁にぶつかる。
 けっこう痛い。


 自分で壁を下げてみる。
 向こうに行ける気がしていいけど、どこかから何かが入ってきそうで、少し、怖い。
 壁を下げてみて、あぁ、いろいろな人がいる事を知る。
 他にもいろいろな壁があることを、あそことあそこには壁がないことを、知る。
 壁があるのに、そこに向かってガンガンぶつかる奴もいる。
 壁はないのに、向こう側に行かない人もいる。透明なのが、あるのかもしれない。
 とりあえず、行ってみればいいのに。
 

 壁の向こう側に人がいる。
 面白そうで、向こうに行ってみたい気もするけれど、
 壁を下げると、その人は倒れるかな、って気もする。
 壁を残して、もたれることができるようにしておけばいいかな。
 そう思って、ひと休み。
 自分が寄りかかった壁は、違う誰かの壁だったりする。
 その人がこもるために作る壁じゃなくて、
 自分が寄りかかるために、作ってくれた、壁。


 …壁がないのも気持ちいいけど、壁があるのも、いいよね。
  倒れるでもなく、座るでもなく、進むでもなく、止まるでもなく。
  壁がないと、雨風もしのげないし、いろいろと守れない。
  壁がない奴は、間取りもよくわからないさ。