ミヤビクエスト〜第67話

  • 第67話〜

 雅たちは街に出た。街中は、すでにお祭騒ぎだった。
 遠くから「いっただき!」とか「コラーっ!」とかの声も聞こえてきたが、祭の空気を楽しんでいる雅たちは特に気にも留めなかった。
 


 大いに盛り上がる街の風景を楽しみながら、雅たちはコンサート会場に着いた。
 会場に着くまでに、雅は帽子を買ってなんだかドラマで出てくるような、いや、ドラマにしか出てこないような探偵っぽくなっていた。トシは、途中多くの人にもみくちゃにされ、上半身裸になっていた。語尾には「しゃらぽわ」が付いている。
 ちゃおと千は腕を組んでいたし、うのっぱは常にテラコの歌を口ずさんでいた。
 「あの、お父さん…」
 「お前にお父さんと呼ばれる筋合いはない!」
 テラコの父は手に付いた…ように見えてただ持っているだけの自慢のフックで雅を小突いた。ただ、父はフックを持っているだけでご機嫌だったので、特に痛くもなかった。
 「いや、そういう話じゃなくて、なんでいつも以上に髪が立ってたり、コスプレっぽい
  コートにたくさん鎖をつけてたりするです?」
 「それはもう、テラコのミサ…いや、ライブがあるからに決まってるじゃないか!
  これから処刑される…いや、ライブに行くには、正装だろ、正装!」
 「いや、正装って…、それより、お父さんはマネージャーなのに、こんなところに
  いていいんですか?楽屋とかに行かなくてもいいんですか?」
 「はっ、そうだった!ありがとう、行ってくるよ。
  君たちはテラコのライブを見て存分に楽しんでくれ、私は行くよ!」
 そういうと、自分で無理矢理コートの裾をはためかせながら去っていった…



 テラコの父が去ったあと、雅たちはその他の多くのファンがいる会場でライブが始まるのを待っていた。開始を前に、続々と人がやってくる。この街の人や、テラコのライブのためにはるばる遠くからやってきた人など、何万人もの人がそこには集っていた。ライブ前の独特の緊張感がそこにはあった。
 「さて、ここに、このライブにいしーさんはいるんですかねぇ、みのりかわのりお」
 「トシ、みのもんたの本名はわかりづらいよ…、
  う〜ん、こんな賑やかなところにいし〜ちゃんを連れ去った魔王がいるとは思えないけど…
  でも、なんとなく、ここにはいし〜ちゃんがいる気がするんだ、うん。」
 「それはいつもの超能力による直感アルか?」
 「いや、違う。これは超能力じゃないよ。超能力よりも、もっとすごい力だよ。」
 「ほえ〜、それって何ですか?」
 「千ちゃん、聞いちゃダメあるよ。きっと、「これは愛の力だよ」とか、
  クサい事言うに決まってるアル」
 「いや、テラコのライブを前に、そんなクサい事言うわけないですよね、雅さん?」
 「うのっぱ、そのまさかだよ。オレは、誰よりもいし〜ちゃんを愛しているんだっ!!」
 ライブ前というのもあってか、雅は叫んでしまった。会場中に「愛しているんだっ!」が響き渡った。そのとき…


 雅たちの前方の客の髪の毛が動いた。それを雅は見逃さなかった。
 「あ、あの前の人、寝癖が大きくはねたぞ!あの寝癖は…」
 そう言うと同時に、その寝癖の客が動き出した…
 「あ、ちょっとまって!」
 テラコのライブは、今にも始まろうとしていた。

 

 ライブの中、雅は愛の力はどのように発揮されるのか?
 …次回に続く!