ミヤビクエスト〜第64話

 「それで、お姉ちゃんたちはなんでこんなところに?」
 「それはもう、テラコに会うために決まってるじゃない!!」
 うのっぱは嬉々として答えた。
 「そうだよなぁ。テラコは世界中に信者がいるからな。
  世の中のすべての人が吸い寄せられるんだよ。重力があるんだよ、テラコには。」
 テラパパはテンションが上がっている。
 「いや、そうじゃなくて、なんでピーマン王国に来たの?
  私がここでコンサートやる、っていうのはこっちに来てから知ったんでしょ?」
 「あ、それはね、雅さんの奥さんがここにいるかもしれないって情報をもらって。」
 「そうアル。…で、ひとりだけ先に飛んできた勇者は何か情報を手に入れたアルか?」
 「あぁ、それはもちろん、いしーちゃんのよくできた夫だからね。
  どうやら、いしーちゃんっぽい人が、明日ピーマン祭を見に行くって
  言ってるらしいよ」
 「じゃあ、明日のピーマン祭で遊びながら探せばいいアルね!」
 「ほえ〜、そうですね〜」
 「いやいや、ちゃおさんも千さんもそんなこと…いや、それもいいかもしれませんね。
  たまには、遊んでみるのもいいかもしれません」
 「あれ、いつもしっかりつっこむはずのトシが受け入れたぞ、意外だなぁ。
  ま、時にはそういうこともあるか。うん、たまには、いいかもな。
  明日、ピーマン祭を見て回りながら、ゆっくりいしーちゃんを探すか」
 なんだか、雅たちの周りには、いつもと違う空気が流れていた。
 ピーマン王国には、あたたかい風が吹いていた。



 「あの、お姉ちゃん、雅さんたち、私、これから明日のライブのリハーサルがあるんですけど、
  良かったら見に来ません?どうやら、少しゆっくりされるみたいですし。」
 「え、いいの?思いっきり頭とかふっちゃっていいの?」
 「え、リハーサルだからそこまで本気じゃないけど…、
  頭を振るかどうかはお姉ちゃんの自由だよ」
 「よし、じゃあ、行ってみようか。
  世界的スターのテラコちゃんのライブのリハが見れるなんて、めったにないからね」
 

 雅たちは、テラコについて会場に行き、ステージ上でリハーサルを行うスターの姿に見とれていた。
 リハーサルながらも、テラコの歌声は伸びやかで、雅たちはその歌声に癒されていた。
 うのっぱは、興奮して頭をふっていた。
 ポールとポコは、うのっぱの頭の上に乗っていなくて本当に良かったと、ひそかに思った。


 その夜…
 「いやぁ、リハーサルながらも、すごかったね。
  あっという間だったよ。興奮したし、泣ける曲もあったし…
  特に、最後にやっていた曲、あれには自然と涙が出たよ」
 雅たちは、テラコに誘われ、超高級ディナーを食べていた。そこでも雅はリハーサルの興奮を抑えきれずにいた。
 「あ、最後にやったやつは、新曲です。歌詞は別の人に書いてもらって…」
 「いやぁ、それにしても、本当にすごいなぁ、テラコは。
  ほんと、お父さん嬉しくて爪も黒くしちゃうよ」
 テラパパは食事中にも関わらず、興奮しすぎて急に黒いマニキュアを塗りだした。


 そんなこんなで、テラコやテラコの父との楽しい夜は深まっていくのであった…

 
 次回へ続く!