ミヤビクエスト〜第43話
- 第43話〜もうひとりの師匠
…どんな議題であるかどうかは関係なく、いつ何時、どんな状態でも、会議というものは脱線するものである。
大事な大事な仲間が洗脳されたような感じになって、それを助けるためにどうするかを考える時でも、会議の脱線を抑えることはできない。
ということで、雅たちの話の中心は、ちゃおの師匠のことになっていた。
「あのナギナタの人が、ちゃおの師匠なの?」
「そうアル。あの時は雅さんに襲い掛かってたけど、あれは絶対に師匠アル。
あの刑事コ○ンボみたいなコートとナギナタのセットは、師匠しかないアル。」
「そういえば、最初の方に師匠は二人いる、とか言ってたよね?あれは…」
「もちろん武術の師匠アル。昔はよく二人で『十文字斬り!』とかしたものアル。
師匠の剣は火をも斬る…あれはすごかったアル…」
「あの、昔を懐かしんで遠い目をなさっているところ悪いんですけど、
そんな火も斬ったりする、ちゃおみたいな強い娘の師匠が何であんなところで看守を…」
「知らないアル」
ちゃおはきっぱりと言った。
「きっと大人の世界にはいろいろな都合があるアル。深追いはしないアル。
そんなことより、お師匠サマは何もしていないのに警察に職務質問されるぐらいの
オーラが出ていたり、トラックに轢かれても打ち身だけだったり、
とにかく偉大なお師匠サマで…」
「いやいや、そんなことより、雅さん?ちゃお?トシ?
千ちゃんをどうにかしなきゃいけないんじゃ…、っていうかまず、ここはどこですか?」
「あぁ、そうだった!!テレポートしてみたは良いけど、ほんと、ここどこだろ?」
「雅さん、テレポートをするコツはつかめたけど、まだ自分の思ったところには飛べないんですね?」
「いやぁ、あの時は必死でどこ飛ぼうとかも考えられなかったから…てへっ」
「てへっ、とか言っても可愛くないですよ、って、あれ、いつもならここでちゃおが蹴りを入れるはずなのに…、ちゃお?」
「いやぁ、ほんとお師匠サマは偉大で…、一時期はどこかの殿だったらしくて、
その頃は『時代はもうオール殿下!』って話題で…」
ちゃおは依然遠い目で昔を懐かしんでいる…
「あぁ、ちゃお…千ちゃんがいなくなって悲しんでいるのね…あぁ、かわいそう。
あ!!あんなところに一軒家が建ってますよ!」
うのっぱはよくわからない展開で話をした。雅とトシは急な「あ!!」にびっくりした。寿命が少しだけ縮んだ気がした。急に「家が」って言われてそっちを向いたため、首もちょっとだけ痛めた。
「あ、本当だ…」
首をさすりながらトシが言う。
「とりあえず、行ってみようか」
「お師匠サマは…」
ちゃおは依然遠い目をして武術の師匠の武勇伝を語っている。
「あの〜すいません」
…反応がないようなので、雅たちは勝手に家に入ってみることにした。
「RPGって、こういう感じですよね」
「うのっぱさん、それはなんだかぶっちゃけ過ぎですよ。まぁ、そうですけど」
雅たちは「すいませ〜ん」とか「誰かいませんか?」とか言いながら家の中を探すも、誰も見当たらない。
「う〜ん、オレの超能力では、人がいそうな気はするんだけどなぁ?ちゃおはどう思う?」
…ちゃおの目つきが家に来る前とは違っている。遠い目ではなくなっているが、昔を懐かしむような目であることは変わらない。
「そうアル!見覚えると思ったら、ここは、もうひとりのお師匠サマの家アル!懐かしいアル!
師匠!師匠〜!!」
そう言うとちゃおは、タンスの中や机の引き出しを探し出した。
「あぁ、ちゃお…千ちゃんがいなくなってあなたまでおかしくなってしまったのね…
かわいそう…こんな時はライブで頭でも振って気分を…」
「いや、おかしくなってはいないアル。もうひとりの師匠ならこの辺にいてもおかしくないアル。」
雅たちはちゃおの言っていることが理解できずにいた。
そんな中でもちゃおは、台所の戸棚とか、カバンの中とか、鍋の中とかを探し続けている。そんな時…
「そんなところにはいないっつーの!!」
「その声は…師匠!そんなところに!!」
ちゃおのもうひとりの師匠とはいったいどこから現れたのか?
どんな師匠なのか?サイズは?
…次回に続く!