ミヤビクエスト
- 第22話〜新情報〜
そんなこんなで、雅と仲間たち、テラコとうのっぱは父親の家に集っていた。
「…いやぁ、やっぱりオレってすごいなぁ、みんなに先駆けて村に来ちゃうんだから」
仲間たちは無視した。
「本当に、オレってすごいなぁ。この前は夢の中でうさぎになるし…」
仲間たちは無視した。
「ただ、自分だけできるって言うのももったいないから、今度、超能力を鍛えるゲームでも作 ろ…ごふっ!」
ちゃおは雅のみぞおちを蹴った!ちゃおはレベルが上がった!雅は眠りに落ちた!周囲のテンションはもとに戻った!
「…で、テラコはなんであんなところで歌うようになったの?」
「お姉ちゃん、それはね…」
「きっと、あれアルね。白い服・赤ネクタイの集団に紙を渡されて、気づいたら立たされていた アルよ」
「ち、違いますよ。お父さんがかっこいいって言うだけで買ってきたギターがもったいないから、 ムダなものにならないように「弾かなきゃ」って思って弾いてたら、その魅力にとりつかれて、 ずっと弾きながら歌ってたら、突然スカウトされて…」
「おぉ!そんなにも父さんのことを考えてくれていたなんて、やっぱりテラコはいい娘だなぁ。良 い娘だから、お父さん張り切って髪の毛立てちゃうぞぉ!」
父親はなぜか髪の毛を立てだした。調子に乗って、その白い顔をさらに白くしている。
…あの頭の上には痛くて乗れないな、とポコは思った。
「…雅さんたちは、なんで私と姉を会わせようと?」
気絶している雅に代わってトシが説明した。
「それは、雅さんの奥さんを探すために魔物退治の旅をしている途中で、偶然この村によって みたら、あなた方のお父さんに頼まれまして…」
「雅さんが勝手に引き受けちゃったんですよね〜。えへっ」
千は父親に意味なく微笑んだ。父親の顔はほんのり赤くなった。
「へぇ、そうなんですか。魔物といえば、ここの近くの洞窟になんだかたくさん魔物がいるって 噂ですよ。誰かがそこでマイナスイオンドライヤーを見つけたって話も…」
「ま、マイナスイオンドリャ…、あ、噛んだ!マイナスイオンドライヤー!?それはもしかした
ら…、よし!その洞窟に行こう!」
みぞおちのショックから立ち直った雅は跳ね起きて、すぐさま外に出ようとした。
「待ってください!その洞窟は近いとは言っても迷いやすい場所にあります。妹と出会わせて
いただいたお礼もありますし、私が一緒に行って道案内します!」
「お姉ちゃん、私も…」
「いいえテラコ、あなたはもう立派なロックスター、歌で世界中の人を救ってあげて。こんな人
たちの相手は私で十分よ!」
「こ、こんな人たちって…、でも、ありがとうございます」
「よろしくお願いするアル」
「仲間が増えましたね、えへっ」
うのっぱが仲間になった!テラコは「立派なロックスター」になった!千の笑顔で父親の顔はさらに赤くなった!
「よし、じゃあ、あらためて洞窟に向けて出発だ!」
…マイナスイオンドライヤーとはいったい?洞窟に潜む魔物はどんな魔物なのか?
はじめてのダンジョンへの期待は高まるばかり!次回に続く!
「え?父は普通に生きてますけど…」
洞窟への道中、うのっぱは言った。
「え、でもあの人自分で「幽霊だ」って…」
「あぁ、父は時々そういうワケのわからないこと言うんですよ、自分はてるてる坊主の親玉だ、
とか。誰も信じませんよね、そんな冗談」
「はは、やっぱり、そんな、幽霊だなんてことないよねぇ〜。幽霊だったら、オレの超能力でわ
かるはずだもん!ははは、そうだよね〜」
「でも、ポコも「幽霊だ」って言ってたはずアル…」
…ポコは思った。あの白い肌の黒い人の冗談に自分が少し乗っかったぐらいで騙されるような人たちと一緒にいれば、当分マスコットキャラの地位は安泰だなぁ、と。
続く…